東京都竹芝桟橋から、小笠原に向けて出港。
距離にして南に下ること1000km、25時間半の長い船旅です。飛行機を使えない為、日本で最も旅程が長い1つだろうと言われます。
出航後、船の中で一泊し、翌日11時半の定刻を30分程遅れて父島に到着しました。
ここまでと翌日は一緒に取材に行ったTさんと一緒だったので、そちらの体験記は彼に任せるとして、別行動となったところから写真を交えて、小笠原の魅力を伝えたいと思います。


【左:竹芝港より小笠原に向けて出発するおがさわら丸】【右:小笠原の港に到着】
同行人と別行動となった日。
朝から慌しく準備を始め、水着でシュノーケルを抱えた人やウェットスーツの人達に出遅れそうになりながらも慌てて車に乗り込み、港に移動。宿のお世話になったペンション「パパヤ」のクルーザー、Miss PAPAYAに乗り込み、間敏な注意とクルーザーの案内と共に船はすぐに出港しました。
大村海岸から二見湾に出て、Miss PAPAYAはまず「千尋岩(ちひろいわ/せんじんいわ)」、通称ハートロックへ進みました。正面から見れば、なるほど。黒い断崖絶壁の中に赤色の岩肌がハートの形に見えます。


【海から見たハートロック】
ハートロックを見た後、ジョンビーチ・ジニービーチが見えてきました。海岸線に白い珊瑚砂を抱えた美しい浜が見えます。
地元の人の話によれば、このビーチまでの道のりは舗装道路では無く、給水が可能なポイントも無い為に非常に険しく500mlのペットボトル2本でも水が足りないだろうとの事。徒歩では無く、シーカヤックを使って海からアクセスするのが一番の近道だそうです。この時、一緒に小笠原に上陸した相方が徒歩でこの浜を訪れていたとは思いもしませんでした。≪こちらの記事を参照≫


【左:ジョンビーチ】【右:ジニービーチ】この二つのビーチは一つの岩をはさんで、隣同士で並んでいます。

南島は小笠原国立公園の中でもとりわけ優れた景観を持ち、学術的にも特異な地形と地質から特別保護地区として指定され、厳しく管理されています。
「宝石の島」との形容は現東京都都知事がこの島の視察に訪れた際に言った言葉だそうです。しかしながら、この南島は当時多くの観光客が上陸した為、踏み荒らされた赤土が海上に流出、島の景観破壊や海鳥の巣穴の破壊、流出した土砂による珊瑚への影響などが見られました。
その後、南島は特別保護地区に指定され、その貴重な自然を未来に託すためにエコツーリズムを推進しています。エコツーリズムでは基本ガイドラインを基に、各協会・ガイドが自然保護を配慮し、エコツアーを行っています。
南島に上陸すると、現地を踏み荒らさないように飛び石が整備されているので、できる限り飛び石の上を歩くようガイドより指示を受けました。
【以下、主な小笠原エコツーリズムのガイドライン】
・植物・落葉・落枝などの採取、動物の捕獲、卵の採取、焚き火などの禁止。
・東京都自然ガイドの指示に従う。ガイドは腕章を着用。
・指定経路以外は利用しない。指定経路以外は立ち入り禁止。
・植物、動物、木片、石の移動禁止。
・移入種を持ち込まない。
・動物にえさを与えない。
・動物を脅かしたり、追い立てたりしない。
・岩石などに落書きをしない。
・ごみを捨てず、すべて持ち帰る。また、海洋投棄をしない。
・最大利用時間は2時間。
・1日の最大上陸人数は100人まで。
・11月から1月は上陸禁止。
・ガイド1人が引率する利用者人数は15人まで。
■ 参考:東京都環境局公式サイト「小笠原諸島のエコツーリズム:ルールに関する協定別表」
南島一帯は、石灰岩で構成される島々と岩礁で構成されるカルスト地形が海水に水没してできた沈水カルスト地形です。カルスト地形というと、他には山口県の秋吉台や福岡県の平尾台などが有名。
地質学的にも世界中で多数の沈水カルスト地形を見る事はできるのですが、約5000万年前から2000万年前という時期の沈水カルスト地形は国内でも貴重。
岩礁の間を船が通る際に海を覗き込むと、非常に浅い場所であり、海水の高い透明度もあって、透き通るような青を通して白い珊瑚砂が取り囲む特有の地形を見る事ができました。


【左:ジニービーチ近辺、海中に見える沈水カルスト地形】【右:南島近辺のラピエ】
南島の南側にある鮫洲の奥から上陸。
鮫池を背に100mほど進むと「オナガミズナギドリ」の巣がありました。事前にガイドが避けて通るように指示し、巣を壊してしまわないように移動。エコツーリズム実現の為にこのようなガイドの指示と存在がとても大事だと実感しました。
その後、東尾根に向かってラピエとハマゴウ、モンパノキの間を抜けながら上っていきます。
特徴的な沈水カルスト地形の向こう、遠い対岸のジニービーチにカヤックで来た人達が浜に腰を下ろし休憩していました。
空にはアナドリが周回しています。ふとガイドがここにアナドリの巣があるので気をつけてと指示し、覗き込むと黒い羽のヒナが穴の中に居ました。上空を周回しているのは多分親でしょう。


【左:アナドリの巣とヒナ】【右:空を周回するアナドリの親】
小高い東尾根から見下ろす扇池と陰陽池はとても同じ島と思えない景観でした。
東尾根を下り、まずは陰陽池に向かって歩く途中、白い砂浜から風で非常に多くのヒロベソカタマイマイの貝殻がありました。このヒロベソカタマイマイは1000年から2000年程前に絶滅し、今は半化石となった貝殻のみがこのように出てきます。風化しないのかと不思議に思ったのですが、貝殻は非常に硬く簡単に風化するような物ではありませんでした。心無い人が採取してしまうのか、数が減っているそうです。


【半化石化したヒロベソカタマイマイ】
その後、陰陽池に到着すると目の前に広がる景観に驚きました。この場で写真を残しても誰も海に行ってきたとは信用してくれないでしょう。秋吉台や平尾台と同様のカルスト地形がすり鉢状に広がり、目の前に広がる池はまるで淡水池です。通常のカルスト地形との違いといえば雨水に侵食された羊の背中のような石灰石ではなく、鋭く突き出たラピエという位です。この時はシギが餌をとりに池の畔を歩いていました。
その後、扇池に移動をして、船が拾いにくるまで休憩。
この景観、聞けばスタジオジブリの作品「紅の豚」主人公ポルコの駐機している場所の参考になったという話もあるらしいとの事。確かに良く似たモチーフの風景で、赤い単葉機が止まっていてもおかしくありませんでした。


【扇池】
迎えに来た船に拾われ、沖合いで当初乗っていたクルーザー、Miss PAPAYAと合流しました。船は島の南東の方向「巽崎」「巽湾」に向けて舵を進め、イルカ・クジラウォッチングへ向かいます。
【その2へ続く(後日更新)】