南島を後にし、船は南東の巽崎と巽島の間を抜けて、巽湾に到着。今回のツアーの目玉、ドルフィンスイムとホエールウォッチングが始まります。
小笠原では、南島エコツーリズムと同様に、イルカに対してのアプローチや小型船舶の停船など自主ルールを設けています。そのルールに則り船長が丁寧にクルーザーを操舵し、イルカの群れに近づきます。
他の人の視線を追うと、遠くでは無く非常に近くをイルカがスイスイ泳ぎ回っていました。




その後、参加者は慌しくシュノーケルとフィンを着け、一列にドルフィンステップ(クルーザーの後方のイルカアプローチの台)に並びます。イルカから50m程離れた所から静かにアプローチし、皆でイルカに向かって泳いでいくためです。
海中は驚くほど透明度が高く、前方には優雅に泳ぎ回るイルカの群れがはっきりと見えるほどです。深さも結構ある筈なのですが、白い砂の海底と緑色のサンゴがはっきり見えます。正直な所、透明度40mと聞いて非常に懐疑的だったのですが、見て納得のすばらしさでした。
勢い良く海中を楽しむイルカの群れ、耳を傾ければ「キュー、キキー」といった鳴き声がとても良く聞こえます。班のつき方、顔の表情、体色の濃さ、傷の位置など個性が豊かで一頭として同じものはありません。


イルカを追いかけて疲れた様子の一行を連れて、船長は巽崎から南東の外洋へ舵を取りました。この時期はマッコウクジラが姿を見せるとの事で外洋の荒れた海面をクルーザーが進みます。
ちなみに、5月から11月まではマッコウクジラがシーズンで、12月から5月までは迫力あるザトウクジラがシーズンと、小笠原は年中クジラを見る事ができるそうです。今回ウォッチングするマッコウクジラは、一度ブリーチングすると1000m程度は軽く潜行可能で1時間近く潜ったままだそうで、見つけるのが難しい上にポイントに着いたときには既に潜行していたという事も多々あるとか。イルカと同様、クジラのウォッチングを行う場合も厳しい規定を設けており、船はクジラから300mで減速、50m周辺と進行方向は侵入禁止と定められており、ここにも小笠原のエコツーリズムの考えが根付いていると感心しました。
最初のマッコウクジラは30分程経った頃に見つかりました。マッコウクジラは頭部の左斜め前に潮を吹くのが特徴的で、そのあっという間に消える潮を頼りに目視で探します。カメラを構えて、数分もしないうちに1度目は小さな尾ひれを見せて海中へ消えてしまいました。それから根気良く探し続けて30分後、別のマッコウクジラが現れました。しかし、このクジラも潮を吹きながら黒くヌメッとした頭を見せたと思ったら、あっという間に海中へ潜っていきました。なかなかシャッターチャンスに恵まれません。
それから40分程たった時に再度マッコウクジラ発見の無線が入りました。船長が急いで舵を捌き、船は反対側へ転回。全速で荒れた海面を跳ねるように進みます。
場所を確認した船長は船を慎重に操舵、そして最高のポイントで停船。マッコウクジラはクルーザーの直ぐ傍に向かって前方からゆっくりとやってきました。(※停船後、前方からクジラがやってくる場合は範囲規定対象外となります。) クルーザーの数メートル前を通過する黒い巨体は迫力そのもの。船はその後クジラを避けるように舵を波をうまく使い、クジラの背面を船体の横から見られるように捉えました。同乗者の人々が感激の声をあげる中で、サービス精神旺盛なマッコウクジラはクルーザの同乗者に向けて、歓喜の声と共に黒く光る尾ひれをバッチリ見せて海中へ潜っていきました。


滞在中お世話になった宿では、船が本土に出航する前の夜にお別れパーティーを行っており、地元の食材と島レモンで作ったジントニックが振舞われました。
◆サワラの刺身とタタキ
内地でサワラといえば、西京漬けなどの淡白でサッパリした肉質を生かした料理が多いのですが、小笠原近海では大型のサワラが獲れるそうです。出てきたのは刺身とタタキ。傷みも速いサワラは中々刺身でお目にはかかれません。地元では島唐辛子を漬け込んだ醤油で食べるそうで、醤油のコクとハバネロ並みの辛味に、サワラのサッパリ味がマッチしていて、とても箸が進みました。
この島唐辛子、大きさが1~1.5センチ程度の先端が尖った唐辛子で、手に乗せただけでも香りが非常に強く、鼻や涙腺が緩くなります。一口かじってみた所、顔から火が突き抜けるような辛さでした。島では酢に漬けたり、醤油に漬けたり、味噌に漬けたりといった、沖縄で見かけるような使い方をしているそうです。ただ、辛さは明らかにこちらが上でした。
◆島寿司
新鮮なサワラの切り身をヅケにした寿司です。サワラの切り身と、酢飯と和カラシで握られています。わさびでは無く、カラシで握る寿司とは驚きましたが、淡白なサワラに醤油の香りと、やわらかい切り身のアブラが旨みを引き出し、その引き締め役としてのカラシのチョイスが絶妙の味です。
◆カメ料理
小笠原では古くからアオウミガメを食べる習慣があります。その肉は美味とされ、小笠原でも食用として乱獲された時期があります。現在では、その固体数が減少していることから絶滅危惧種とされ、地元の海洋センター(通称:カメセンター)によって積極的な保護が行われています。地元の人たちはその中から郷土料理向けとして若干の食用肉として分けてもらいます。今回振舞われたのは刺身と煮物で、刺身は脂身のない赤身で、非常にきめ細かくやわらかい、上質な馬肉のような味でした。煮物はすっぽん料理にも似た、コリコリした感じの煮物でした。
◆島レモン
戦前に南太平洋から移入されたといわれるマイヤーズレモンの系統で、菊池レモン、島レモンと呼ばれています。大きさはスダチよりは大きく、カボス位の大きさで、実が青い状態から食べたりする事が出来ます。味は酸味がそれほど強くなく、さわやかな香りと甘みを感じました。ジントニックの他に地元ではスライスして焼酎に浮かべたりして使うそうです。
◆島のフルーツと恒例のお見送り風景




