夢我人『ウィスキー知者』としてご紹介した、スコッチ文化研究所の土屋守さん。
そのお話の中に『スコッチウィスキー』や『シングルモルト』など、似たような言葉が多く出てきました。それらがスコットランドのウィスキーであるとは分かっても、具体的にどういうものなのか分かりづらい方もいることと思います。すでにご存知の方には退屈なお話になってしまうと思いますが、今回はそんな分類をわかりやすく表にしながら、日本におけるスコッチウィスキーへの誤解の紐解きをしてみましょう。
1970年代から80年代にかけての日本では、サントリーリザーブやシーバスリーガル、オールドパーなどが流行していました。国内で一般的にウィスキーと呼ばれていたそれらのウィスキー。
そのほとんどはブレンデッドウィスキーでした。その中で、スコットランドのウィスキーであるシーバスリーガルやオールドパーは総じてスコッチウィスキーという呼ばれるようになりました。
もちろん下の表からも分かるように、ブレンデッドウィスキーもスコッチウィスキーです。決して間違いではありません。さらに細かい分類をした呼び方をするかどうかという問題なのです。
土屋さんのお話からも窺えるように、この当時、シングルモルトはその存在どころか言葉自体がほとんど知られていない状態でした。
本来、ブレンデッドウィスキーと対比分類されるべきシングルモルトが存在しないも同然だったため、当時は細かい分類をする必要がありませんでした。
そのために【スコッチウィスキー=ブレンデッドウィスキー】という誤認が広がってしまったのです。

しかし時代の変化と共に、それまでブレンデッドウィスキーの後ろに隠れていたシングルモルトが少しずつ知られるようになりました。
その変化に加えてそれまでの誤認も合わさり、ブレンデッドウィスキーとシングルモルトは混在して理解されたまま、現在に至っているという訳です。

※この他にも、シングルモルトをさらにシングルカスク、クォーターカスクに分けるなど、詳細の分類もありますがあくまで基本分類の紹介なのでそこまでは分類していません。

ただ、私たちは流行や人気というものに心を囚われすぎないように気をつけなくてはなりません。
確かに今はシングルモルトが流行していますが、決してブレンデッドウィスキーがシングルモルトに劣っているというわけではないのです。
土屋さんのお話の中に「モルトウィスキーが自然がつくった神秘だとすると、ブレンデッドウィスキーは人がつくる芸術と言えるだろう」という言葉がありました。シングルモルトはその土地の個性がそのままウィスキーの味に反映されます。
その個性は本当に様々で、中には同じ種類のお酒とは思えないほど味が違うものもあります。
そしてそれこそが、シングルモルトの最大の楽しみと言えるでしょう。
それに対してブレンデッドウィスキーは、各メーカーのブレンダーと呼ばれる職人が作り上げます。
モルトやグレーンなど様々な原酒をブレンドし、自然のままでは決して生み出されることのない味を作り上げるのです。それは大木を切って形を整え、設計図どおりに家を建てるようなもので、人間の英知の結晶といえるかも知れません。富士山を見たときの感動。ピラミッドを見たときの感動。
その対象は全く異なるものかも知れませんが、どちらも心を動かされる偉大なものに違いはありません。
シングルモルトとブレンデッドウィスキーの関係もまさに同じなのです。
自然が生み出すお酒、人が緻密に作り上げるお酒。どちらを楽しむか、どちらが好みに合うかは人それぞれの自由なのです。