こぼれ話

暗い森のヤギ怖いよ

暗い森のヤギ怖い:写真1

数年に一度、父島では山中の熱中症と脱水症状による遭難死亡者が出ます。特に多いのは、風光明媚な海岸で有名なジニービーチへ続く山道での遭難です。

ジニービーチへの行き方は2通り。
ひとつは海路から船もしくはカヌーで訪れる方法。もうひとつは陸路から遊歩道を進み訪れる方法。陸路で訪れる際には、最低でも2リットルの水を持っていくようにとの注意書きが観光案内にも書かれています。

なんとなく思い立って、実際に行ってみました。

観光案内によると3.2km。徒歩で片道約90分の距離とのこと。地図上で見ると非常に短い道のりに感じます。

取材のアポイントの都合で、早朝の山道を一人で歩きました。まだ店舗も開いていない時間だったため、食事も摂らずに出発しました。さらに悪いことに案内図をよく読んでいなかったため、水を1リットルしか準備しませんでした。

暗い森のヤギ怖い:写真2

山道の入り口から暫くの間は、穏やかな遊歩道が続きます。
ほとんど人の歩かない早朝だからでしょうか、野生のヤギが至る所で草を食んでいます。しかし…食事に夢中だからなのか、人間を舐めきっているのか。ほんの2~3mの距離まで近づかないと逃げてくれません。無言で近づいて対峙などしてしまうと、異様な迫力を感じて妙に疲れてしまいます。きっとヤギもそう感じていたことでしょう。食事と団欒のジャマをした私が無粋でしたね。
ごめんねヤギ君。

暗い森のヤギ怖い:写真3

そんなヤギ群の登場にも慣れた頃、二つ目の山に入りました。
ひとつ目の山とは違い、とても進みにくい山道が続きます。前週の台風で遊歩道が部分的に壊れていたこともあり、ぬかるんだ道を一歩一歩進んでいきます。

歩幅のリズムを狂わす岩場。
体力を少しずつ奪っていく独特の湿気。
鬱蒼と茂る大木と先の見えない坂道。

数年に一度は遭難者がでるという山道。
遭難があるのは決まって台風の後だそうです。(※そういえば4日前に台風9号が父島を直撃してました)実際、ほんの2週間前にも旅行者が遭難・死亡しているという事実が山中の孤独と不安を煽り続けます。

途中で何度か引き返すことも考えましたが、何とか目的の海岸まで辿り着くことができました。

暗い森のヤギ怖い:写真4

先にも書いたアポイントの都合で、海岸では5分と過ごさずに折り返します。出発してからすでに2時間近くが経過しています。

復路は先の見えない往路よりも気持ちは楽でしたが、途中でとうとう水を切らしてしまい、かなり辛い思いをしました。こんな南の島くんだりまで来て、海にも入らず何をしてるのかと考えはじめ、足取りが重く体力も消耗し、岩場では何度も足を踏み外しそうになりました。

それでも何とか入口に戻ったのは朝8時30分。
水がなくなってから著しくペースが落ちましたが、出発してからほぼ歩き続けて約3時間半の道のりでした。水分だけでなく、適度な休憩と食事、飴などを持っていったほうが無難です。

また(私が言うのもなんですが)、なるべく単独での行動は控えましょう。それと、宿泊先へ目的地を明確に伝えることを忘れないようにしましょう。(※私は事後報告をしてかなり叱られました)

南国での事故というと、海難だけをイメージしがちですが都会から離れた自然の中にはそれだけ危険も散らばっていることを再認識することができました。