こぼれ話

戦争の記憶

陸軍高射砲

父島をはじめ小笠原の各島では、至る所で戦跡を見ることができます。山中には高射砲やトーチカ、機関砲などが多く残っており、海岸では座礁した軍船を見て取ることもできます。

国産コーヒー農家としてご紹介した野瀬農園さん。実はもうひとつの顔を持っています。

野瀬さんが幼少期を過ごした実家は、太平洋戦争中に徴収されて父島の司令部として使用されていました。

そのこともあり、私有地である敷地内には戦時の坑道が今でも残っています。至る所に当時の兵士の生活を感じさせる遺物が残り、映画や写真とは異なる、現実世界としての戦争を感じることができます。

兵士の食事を作っていたかまどの跡。
坑道内の貯水槽とそれを作り上げた兵士による壁字。
雨水を飲料水にするための三段式ろ過機。
兵士たちが使っていた浴室。
幾重ものドアのさらに奥に作られた会議室。

それぞれが当時の生活を偲ばせる物です。間違いなくこの場所で。多くの若者が世界を巻き込む大戦と対峙していたのです。

 

かまどの跡 陸軍の機関砲

【左】かまどの跡 【右】陸軍の機関砲

奥深く続く坑道 壁に残る兵士の言葉

【左】奥深く続く坑道 【右】壁に残る兵士の言葉

 

三段式のろ過装置 モールス信号の無線台

【左】三段式ろ過装置 【右】モールス信号の無線台

日本本土への米軍進攻を一日でも遅らせるための戦い。
故郷から遠く離れたこの島で、若者達はどのような気持ちだったか。

勝利への光明を見出せずに過ごす夜が、どれほど不安だったか。
不安など感じることなく、愛国心と忠誠心で充実感に溢れていたのか。

博物館に保存されていれば貴重な史料になるはずの遺物。
父島では史料ではなく記憶として実際に触れることがきます。

時が経た時代でこそ忘れてはならない。
人々が記憶を放棄したその時、全てがまた繰り返されるはずです。

現代の興味から始まり、過去を手がかりとして未来への展望を探る。
この島で、そんな『歴史を学ぶ本質』を体感することができました。

知識としての戦争がいかに非力なものであるかを知るためにも、綺麗な海を体験する合間に、一度でも戦跡を訪れてみてはいかがでしょうか。
 
※野瀬農園では戦跡の一般公開は基本的に行っておりません。