
『マクロビオティック』という言葉をご存知でしょうか。20世紀初めの日本で誕生した【食による健康と長寿】をテーマにした食事法です。特に欧米で強い人気を博しました。そのマクロビオティック初の甘味処が、実は巣鴨にあるのです。
『マクロビオティック』という言葉をご存知でしょうか。
20世紀初めの日本で誕生した、【食による健康と長寿】をテーマにした食事法です。特に欧米で強い人気を博したその食事法は、最近国内でも広く取り上げられるようになりました。
「玄米や雑穀などを主食とする」、「化学調味料および肉類や乳製品を使用しない」などの特徴があり、健康だけでなくダイエットや美容にも効果があると評判です。
そんなマクロビオティックの考え方のひとつに、『素材を丸ごと調理する』というものがあります。野菜なら皮ごと使う、精白してしまった砂糖・お米は使わないという意味です。
この「精白糖を使ってはいけない」という考え方により、今までマクロビオティックと甘いお菓子は全く縁のないものだと考えられてきました。しかし、マクロビオティックの思想に沿いながらも『甘いお菓子』を作ることに成功した日本で初めての甘味処が東京の巣鴨にあるのです。

「この数年で、巣鴨は『お年寄りの原宿』というイメージで定着しましたが、それは巣鴨という街が『お年寄りでも安心して行ける街』だからだと思うんです。」名所のとげぬき地蔵を横目に見ながら、田中ゆき江さんは巣鴨についてそのように話します。
2児の母親である田中さんは、結婚後ほとんどの時間を専業主婦として過ごしてきました。無事に子どもたちが成人し、母親としての仕事も一区切り…。ビルを所有する知人から出店を誘われたのは、そんな折でした。
とげぬき地蔵にお参りにやって来た方が、ゆっくりすることの出来るお店がない。以前からそう考えていた田中さんは、まっさきに甘味処の出店を思いついたそうです。
表通りの喧騒が届かない裏路地。そんな場所だからこそできる、可愛らしくてゆっくりできるお店…。
誰でも入りやすい優しいお店にしようと決心したのです。
しかし、いざ始めるとなると準備が大変です。レシピ・仕入先・内装デザイン・厨房回り。何しろ全てがゼロからのスタートでしたので、時間はいくらあっても足りませんでした。
それでもご主人や多くのご友人の協力もあり、準備は順調に進みました。 いよいよ開店まで1ヵ月…。
目が回るほど忙しい開店準備の休憩中に、ふと手に取った雑誌。田中さんはそこで初めて『マクロビオティック』と出会いました。
以前から食に対して強いこだわりを持っていた田中さんにとって、初めて知るマクロビオティック思想はとても衝撃的なものでした。
精白糖を使ってはいけないマクロビオティックなんて、自分が始める甘味処とは何の関係もない。そう考えて一度は雑誌を棚に戻しました。しかし…どうにも気になって仕方がないのです。
結局、田中さんはマクロビオティックのアカデミーに電話を入れ、実際に足を運ぶことになります。そして一通りの説明を聞き終わると、その場でアカデミーの生徒になることを決心したのです。
これは開店予定の1ヵ月前のことです。
本当は準備以外のことをする時間などないはずですが、田中さんは熱心にアカデミーに通います。食と健康の結びつきを知れば知るほど、自分が始めようとしているお店に対して疑問が沸いてきたからです。
もはや健康へのこだわりを持たないお店にする気にはなれませんでした。しかし、すでに食材の仕入先も決まっています。内装のデザインも固まっています。その日も通常の甘味処としての厨房器具の打合せに行ってきたばかりです。
そもそも精白糖を使わない甘味処なんて、どこにも前例がないのです…。