ウィスキー知者 ~There is a will, there is a way~ | 夢我人No. 土屋 守さんさん

近年、世界的なシングルモルトブームを迎えて従来の消費国だけでなくBRICsにおいてもその消費量が著しく上昇しています。そんなシングルモルトの存在が認識されていなかった時代に逸早くその魅力を見出し、人生を賭して探求した夢我人がいます。

湧き上がる好奇心

しばらくして、スコットランド政府観光局から再び打診がありました。
その内容は、『今度はスコッチウィスキーの中でもシングルモルトの特集をしてくれないだろうか』という取材のお願いでした。

お土産のボウモアを飲んでいるうちに、いつしかその味を好むようになっていた土屋さんは、その依頼を気軽に承諾しました。
しかし、いざシングルモルトの特集をすると言っても、シングルモルトが一体どういうものなのか当時の土屋さんは見当もついていなかったのです。

シングルモルトの存在自体がほとんど知られていない時代。
本で調べようとしたところで、いくら探してもシングルモルトに関する本などありませんでした。
ロンドンの人々に聞くにしても、スコッチウィスキーのことなど誰も興味がなく、知識も持っていませんでした。

唯一『モルトウィスキー・アルマニャック』という小さな本はありましたが、それでも特集を組めるほどの知識を得ることができるものではありません。

土屋さんは仕方なく日本にいる新潮社時代の後輩に連絡をして、シングルモルトに関する本を探してもらうように依頼しました。
しかし返ってきた答えは『すみません…だけどシングルモルトの本なんてありませんよ』というものでした。

いよいよ困り果てていた土屋さんにシングルモルトについて教えてくれたのは、ロンドン市内にいたニッカウィスキーの駐在員でした。

土屋さんは彼の存在を知るなりすぐに電話で連絡を取り、ニッカのロンドンオフィスへと走りました。
そこで長時間にわたりシングルモルトについてのレクチャーを受けることができ、ようやく全体像を掴むことができたのです。

何も知らずに飲み続けたスコッチウィスキーの魅力は、その知識を得ることによりさらに深いものとなりました。
ロンドンでも、もちろん日本でもほとんど知られていないこの不思議に美味しいお酒。
このお酒への興味はこの時から確固としたものへと変わっていきました。

その後すぐに、土屋さんが向かったのは本場スコットランドの蒸留所。
スコットランド政府観光局の積極的な協力のもと最初に訪れたのは、自宅で飲み続けていたウィスキーであるボウモアの蒸留所でした。

蒸留所というウィスキー作りの現場を見ることで、ロンドンでニッカの駐在員から得た知識が、自己経験として息吹をはじめました。
そして、アイラ島を中心に10箇所以上の蒸留所を巡り歩くうちに、それぞれの蒸留所で異なる作り方やその個性の面白さに強烈に惹かれる自分に気づきました。

初めて飲んだ時の不思議で微妙な印象は、少しずつ飲み進めていく中で小さな興味へと変わりました。
そしてその興味は知識を持つことによってさらに深まり、実際に自らで経験することによって己れを魅了するに至ったのです。

一度魅了されたが最後、土屋さんはこの素敵な、そしてまだ広く知られていないお酒の分野を知り尽くそうと心に決めました。

ひとたび興味を持った対象は、とことん納得して結果を出すまで調べ尽くす。
大学卒業後、チベットでフィールドワークを行っていた際も、自著によるチベット語の口語テキストが市販されたほど徹底した調査を行いました。

スコッチウィスキーという新しいフィールドにおいてもその情熱は変わることなく、今日では日本を代表するウィスキー評論家へと至る訳ですが、その飽くなき探究心の根源は大学時代に所属していた探検部にありました。

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